妻が亡くなってから長い年月が経つ。
20年近く前、歩道に突っ込んで来たトラックに跳ねられて妻は脳死状態になり、そして間もなくして心臓が止まった。

妻は、いったい今何処にいるのだろう?
死と共に無に帰してしまったのだろうか?
宗教者が言うように天井の世界に居て修行を積んでいるのだろうか?
色んな人は、色んな事を言うけれど、実際の本当のことは亡くなってみないと分からない。
今、言われている全てのことは、残されたものが自責の念から解放され、心安らかに暮らせるように言われているだけのように思われてしまう。
亡くなった人の魂がどこに存在するかについて考えるのは、残された者の自由であっても構わないであろう。

僕の妻は今何処に居るのだろう・・・
妻は、僕に会えなくて寂しくないのだろうか?
僕は寂しい。
空の雲の上?
空を見ながら道を歩いていると雲の上から僕を見ているような気がしてくる。
お墓の中?
お墓の中で何をしているのだろう?
寒かったり、暑かったりしないのだろうか?
仏壇の位牌の中?
位牌の中に閉じ込められて外の世界は見えるのだろうか?

色んな考え方ができるが、もし、逆に僕が事故に遭って死んでいて、妻が残っていれば、僕の魂はどのように考えるのだろうか?
僕ならきっと・・・
お墓にも居ないし、空にも居ない・・・
立派なお墓を作ってもらっても、仏壇に素敵な飾りをしてもらっても、僕のことを忘れられたら寂しい限りだ。
僕なら、きっと、妻にとっては迷惑な話かもしれないけれど、妻の心の中に住み続けるに違いないと思う。
そこが僕のことを思い続けてくれる僕にとって居心地の良い場所だから。

妻が僕と同じ気持ちなら、きっと妻の魂は僕の心の中に居て、僕の目を通して妻が生甲斐としていた子供のことを見ているのに違いない。

僕も同じであるが、妻にとっても子供は掛け替えの無い存在なのだから!

世間を僕の目を通して見ているに違いない。
妻の魂が僕の心の中に居るのなら、僕はもっと頑張って行かないといけないのだが、僕は頑張りも出来ていないし、大した努力も出来ていない。
自分がこれから生きて行く方向性も決めれないでいる・・・

その証拠に、僕は妻と共に頑張ってきた商売を廃業したではないか・・・

妻の魂は、今、何処に居るのだろう?
消えて無くなったとは考えたくない!